Message
喧騒の世。
——和香木研究所に込めた想い。
この世界はあまりにも騒がしく、価値観の違いから対立は深まり、言葉は容易に消費され、季節の気配さえも気づけば画面の向こうへと遠ざかっていく——まるで乱世のような現代において、人びとが本質的に求めているものとは一体何であろうか。
それは、ツイートやイイネといった瞬間的な快楽ではなく、自らの身体を通して、人間の外側に広がる世界と触れ合う実感——その確かな手応えではないか。
たとえば、朝の窓辺に差し込む光。通り雨のあと、地面から静かに立ちのぼる匂い。道端にふと咲き、やがて枯れていく野花の姿。それらはすべて「自然の理」そのものである。人の営みは大流の只中にあるはずであるが、人びとはいつしかその確かなうつろいを感じ取る感性を手放してしまったようだ。だからこそ、我々は「香」に目を向けた。
香りは、目に見えず、手で掴むこともできない。けれど人は、香りに記憶を宿し、感性を重ね、ときに言葉を超えて、深い領域へと導かれることを知っている。その儚さと一期一会の美学が同居する感覚こそ、人が本来持つ知性と感性の表れであると、我々は考えている。
和香木研究所は、日本独自の香文化の文脈を継承しながら、現代における新たな知性と感性のかたちを探求するクリエイティブ集団である。日本の香りを「味わう」ことを通じて、自然のうつろいにそっと心と身体を委ねること。自分がこの世界の一部として存在しているという感覚を、もう一度日常の中に取り戻すこと。それはやがて、他者を受け入れ、そして自分自身を肯定することへとつながっていく——淑やかで静謐な一刻に立ち返るための起点として、和香木研究所は世界へ向けて創作表現に向き合っている。
比佐 諒斗
和香木研究所 founder / Creative Director
1994年生まれ。2025年和香木研究所《KOBOKU》設立。
『現代における日本の文化創造。』を思想哲学に、ブランドプロデュース・商品企画監修・プロダクトデザイン・建築空間デザイン・イベント監修など、多岐にわたる創作表現やプロデュースを行っている。趣味は茶道や香道、美術・オーケストラ鑑賞、食通のほか、登山やキャンプ、ダイビング、サーフィンなど野外活動も多い。また最近は、食養生のための週末割烹を家族に開いている。