Philosophy
喧噪の世に、静かな拠心を。
ただ「在る」ということを忘れてしまった、心と身体。
———ひとつ、深呼吸すること。
ふと森の記憶がわたしに呼びかける。
風に揺れる葉の囁き、大地に根を張る木々の静かな時間。
喧噪を離れ、手にしたグラスから広がるのはただ在ることを感じるための一刻。
ひと口含めば響いてくる大地の鼓動。
忘れかけていた身体感覚が、少しずつ目を覚ます。
森の呼吸と私の呼吸がひとつになる、静かな拠心を。
Message|喧騒の世——KOBOKUに込めた想い。
いま、私たちが生きているこの世界は、あまりにも騒がしく、あまりにも速い。
情報が洪水のように押し寄せ、言葉が人を傷つけ、季節の気配さえも、スマートフォンの向こうにかき消されてゆく。
まるで乱世のようなこの現代において、人が本質的な意味で必要としているものは、評価や承認の快楽ではなく、自身の身体で人間外の事物の世界に触れる手応えではないか——。そうした問いから、KOBOKUは生まれました。たとえば、朝、窓辺に差し込む光。通り雨のあとの地面に立ちのぼる匂い。道端にふと咲いた野花が、知らぬ間に枯れてゆくさま。それらはすべて、自然の『理(ことわり)』そのもの。人の営みは、その大きな流れの中にたしかにあるにもかかわらず、私たちはいつしか、その静かなうつろいを見失ってしまったのかもしれません。だからこそ私たちは、『香』というものに目を向けました。香りは、目には見えず、手で触れることもできません。けれども人は、香りに記憶を宿し、感情を重ね、時に言葉さえ超えて、何か深いものに触れる儚き美しさを知っています。
古より日本には、香りを「聞く」という香文化がありました。それは香を嗅ぐことではなく、香りに耳を澄ますという営み。まるで、葉音に四季の変化を感じ取るように。その所作には、自然と人との繋がりを結び直す、大切な感性が宿っています。
KOBOKUは、日本独自の香文化の文脈を継承し、新たな知性感性のかたちや自己美意識の甦生・真価を目指しています。日本の香りを「味わう」ことを通じて、自然のうつろいにそっと心と身体を委ねること——自分がこの世界の中に、自然の一部として在るのだという感覚を取り戻すこと。それが、私たちの生きる喧噪の世界において、「他者を肯定する」そして「自分自身を肯定する」ことに結ばれると信じています。
Produce by KURAFUTO
founder 比佐 諒斗
〔KURAFUTO〕official site
Philosophy|喧噪の世に、静謐なひとときを。